
ディフェンダー110に乗り換える前、5年間を共にしたのがAudi Q7だった。家族でスキーに行き、キャンプに行き、何千キロもの思い出を作ってくれた。かけがえのない存在だった。だからこそ、Q7の良さを知った上でディフェンダーを選んだ理由を、正直に書きたい。

Q7と過ごした雪山の記憶
Q7で雪山には何度も行った。ルーフキャリアにスキー板を積み、家族4人で早朝の関越道を走る。quattro(フルタイム4WD)の安定感は抜群で、圧雪路でもアイスバーンでも不安を感じたことは一度もない。
雪道での安心感がもたらすものは大きい。運転に集中する必要がない分、助手席の妻と会話を楽しみ、後席で眠る子どもたちの寝顔をミラー越しに確認できる。Q7は「家族の思い出をたくさん作ってくれた、かけがえのない存在」だ。この表現に誇張はない。
流線的なデザインと高速安定性

Q7のデザインは流線的で、SUVというよりもグランドツアラーに近い印象を受ける。風の抵抗を意識したルーフラインと、張りのあるフェンダー。高速道路での安定感は、このデザインが生む空力性能によるところも大きいのだろう。
100km/hを超えても車体はピタッと路面に張り付き、横風にも動じない。直進安定性という一点では、Q7は自分が乗ったSUVの中でもトップクラスだった。
4WS(4輪操舵)の便利さは想像以上
Q7には4WS(4輪操舵=リアステア)が装備されていた。全長5m超の大型SUVにもかかわらず、都内の狭い路地やタワーマンションの地下駐車場での取り回しが驚くほど楽だった。Uターンが一発で決まる快感は、一度経験すると手放しがたい。
ディフェンダーには4WSがない。ただし、ボディがスクエアで車両感覚を掴みやすいため、実用上はそこまでのハンデには感じていない。とはいえ、4WSの便利さは正直に言って恋しくなる瞬間がある。
エアサスの走行モード切替——そして気になったロール感
Q7のエアサスは走行モードをComfort、Auto、Sport、Offroadと切り替えられる。Sportモードでは足回りが引き締まり、ワインディングでもフラットな姿勢を保つ。ディフェンダーにはこうしたSportモードがない。
ただ、Q7のエアサスには一つ気になる点があった。段差を越えた後の揺れの収まりに、独特の「ふわっ」とした動きが残ることがある。エアサス特有の挙動なのかもしれないが、高速でのコーナリング時にロール感として現れると、少し気持ち悪さを感じた。
ディフェンダーに試乗したとき、真っ先に驚いたのがこの点だった。コーナリング時のロールがQ7よりも明らかに少ない。2トンを超える車体がスッと曲がっていく感覚。「SUVってこんなに曲がれるのか」と素直に感動した。
アンビエントライトは近未来的、でも少し華美

Q7のインテリアは先進的だ。バーチャルコックピットのフル液晶メーター、アンビエントライトが彩るダッシュボード。夜間のドライブでは、まるでコックピットに座っているかのような気分になる。
ただ、しばらく乗っていると「少し華美かな」と感じることもあった。ブルーやレッドに光るインテリアは確かにカッコいいが、毎日乗る車としては少し刺激が強い。
ディフェンダーのインテリアライティングは対照的だ。控えめで落ち着いた、大人の雰囲気。質実剛健という言葉が似合う空間。好みの問題だが、自分にはディフェンダーの雰囲気のほうがしっくりきた。
自動ブレーキの誤作動が地味にストレスだった
Q7で唯一、家族から不評だったのが自動ブレーキの誤作動だ。何もない場所で突然ブレーキがかかることがたまにあった。運転者だけならまだしも、助手席の妻や後席の子どもたちがびっくりする。
頻度は多くないが、一度でも経験すると「またかかるんじゃないか」という不安が残る。安全装備が逆にストレスになるというのは皮肉な話だ。ディフェンダーでは今のところこの手の誤作動を経験していない。
燃費——ハイオクの出費感
Q7のV6ガソリンターボは決して燃費が悪いわけではない。カタログ値で8〜9km/L程度、高速巡航なら10km/Lを超えることもある。ただ、85Lの大容量タンクを満タンにするとハイオクで15,000円を超える。「すぐに空になる」という印象は、この出費感から来ているのかもしれない。
ディフェンダーのディーゼルは軽油なので、燃料費は体感で3割ほど安い。長距離を走る機会が多い家庭にとって、この差は年間で見ると無視できない。
サイズ比較——並べてみた

乗り換えを検討している時期に、タワーマンションの駐車場で2台を横に並べてみた。全幅はQ7が1,970mm、ディフェンダー110が1,996mmでほぼ同じ。全長もQ7の5,065mmに対してディフェンダーは4,945mmと、むしろディフェンダーのほうが短い。
大きく異なるのは全高だ。Q7の1,740mmに対して、ディフェンダーは1,967mm。約23cmの差は見た目のインパクトに直結する。駐車場で隣に停めると、ディフェンダーが一回り大きく見える。
荷室は、荷室長ではQ7が広い。3列目を倒した状態のフラットな荷室は使い勝手が良い。一方でディフェンダーは高さがあるため、積載容量としてはほぼ同程度。スキー板やキャンプ道具を積む分には、どちらも不自由しない。
息子の一言で決まった
最終的な決め手は、息子の一言だった。ディーラーでディフェンダーを見た瞬間、「かっこいい!」と目を輝かせた。
車選びには理屈がある。スペック、コスト、リセール、使い勝手。全部大事だ。でも、それだけでは決められないものもある。親父として、息子に「お父さんの車、かっこいいね」と言われたい。その気持ちは、スペックシートには載っていない。
車は道具。タフに使いこなしてなんぼ
Q7もディフェンダーも、自分にとっては「どこにでも連れて行ってくれるタフな相棒」だ。車が好きだが、それ以上に道具としての信頼性を重視する。雪道で安心して走れるか。家族の荷物を全部積めるか。10年後も価値が残っているか。
Q7は素晴らしい道具だった。5年間、一度も不満を感じなかった——自動ブレーキの誤作動を除けば。そしてディフェンダーは、Q7が教えてくれた「SUVに求めるもの」を、また違う角度から満たしてくれている。
Q7を検討している人へ。特に家族でスキーやアウトドアに行く人には、心から勧められる一台だ。quattroの安心感、4WSの便利さ、そして何より家族全員が快適に過ごせる室内空間。そして、もしディフェンダーと迷っているなら——一度コーナリングを比べてみてほしい。きっと驚くはずだ。
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